蕎麦湯
蕎麦湯を飲む理由
蕎麦通のシメの楽しみであるそば湯をご存知でしょうか?
蕎麦湯が、どんなものかは知っているけど、飲んだことはないという人もおられることでしょう。
正直大阪生まれ、大阪育ちの私はかなり晩年までそば湯とはどんなものなのか知りませんでした。
そば湯は粋な江戸っ子が愛した通な楽しみ方ですが、現代ではさまざまな栄養や効能があることが分かっています。
そば湯とは、蕎麦の茹で汁のことを言います。古くから営業している蕎麦屋では、蕎麦を食べた後のシメにそば湯を提供する店も多く、「蕎麦通ならそば湯まで楽しむのが粋な食べ方」と愛されてきました。
高価な醤油、味醂、鰹節等で取った蕎麦つゆをそのまま残すのは勿体ないのと後で述べますが栄養価が豊富に溶け出したそば湯を合わせて飲むと、これがまた何とも言えず美味でこれが蕎麦を食べ終わった後の楽しみになったと言えます。
蕎麦湯の歴史は奈良時代にまで遡ります。
最初の蕎麦湯は、蕎麦の実を湯で煮たものであり、その当時は蕎麦を食べやすくする手段として用いられいたようです。
また、寺院や修道院で僧侶たちが身体を温めるために摂ることも一般的でした。
基本的には、盛り蕎麦やざる蕎麦に添えられるものですが、メニューなどには記載していないことが多いため、余計に「蕎麦通が楽しむもの」というイメージがあって好まれているのかもしれません。地域によってもそば湯の知名度は異なり、関西などでは特に「そば湯って何?」「そば湯を飲んだことがない」といった声が多く聞かれます。
私も蕎麦屋さんに勤めていた時、花番(注文を聞いて調理場に通したり、調理場で作られた商品をお客様に給仕するのをコントロールする大切なポジション)の人がお客様が蕎麦を食べ終わる絶妙のタイミングで「そば湯下さい!」と声をかけて、釜前(かままえ。蕎麦を湯がくポジション)の人が素早くそば湯を湯桶(ゆとう。そば湯を入れる漆塗りの急須のような器)に入れてお出ししました。
そば湯の飲み方はシンプルです。まずは、提供されたそば湯をそのまま味わってみてください。
蕎麦の風味や味わいが口いっぱいに広がるのを感じてください。
その後は、つゆや薬味など入れてお好みの味で飲んでも OK です。
蕎麦通のなかには、そば湯の際に使うつゆや薬味のことも考えながら蕎麦を食べる人も少なくありません。
そば湯をいただくつもりなら、提供された薬味を全て使い切らずに少しだけ残しておくとよいでしょう。
それとどろどろのそば湯が出てくることがありますが、あれは釜の湯ではなく別で作っているものですね。
あの濃さのお湯では蕎麦は湯がけません。
あと蕎麦を食べた直後に蕎麦湯が出てくるのは食べた蕎麦がすぐに胃に落ち着き、たとえ食べ過ぎたにしても、胸がすっきりして、お腹の具合が良いからだそうです。
そば湯の栄養と効能
そば湯に豊富に含まれるビタミン B1 や B2 は、糖質と脂質の代謝をよくする効果があります。
脂肪へと変わる前に、分解されることでダイエットの効果も期待できるでしょう。
そば湯を飲むことでも体を温めてくれるため、体そのものの代謝を上げられます。
そばの栄養分としてよく話題になるものに代表的なものに「ルチン」という物質があります。
ルチンはポリフェノール類の一種で抗酸化作用があり、さらには炎症を鎮める効果や、血小板凝集を阻害したり、毛細血管を強化するなどして血流を良くする効果などが報告されています。
そのため、そばの健康効果がルチンの作用によって説明されることが少なくありません。
また、他の栄養分と同じように、そばをゆでるときにこのルチンが溶け出してしまうので「ルチンをきちんと摂取するにはそば湯を飲むべき」ということになります。
そば湯を飲まれたことのない方は次回お蕎麦屋さんに行かれた時、食後に「そば湯下さい!」と是非お申し付けくださいね!